03
〔武田軍:子孫、挨拶編〕
そして二人が幸村達と正式に顔を会わせたのはその日の夜であった。それも信玄の前で。
これは仕組まれたな、と泉は面をつけた下で、湊の斜め後ろに控えた状態で信玄公を見やった。
同じく面を付けたままの湊はお館様がいる為か大人しく座っている。
上座に座る信玄は対面するように座った二組の真田主従にうむ、と一つ声を出すと言った。
「湊、泉、面を取ってみよ」
「はっ」
まだ何も説明されていない幸村と佐助は意味が分からないまま湊達が面を外すのを待った。
そして露になった相貌に目を見開く。
「なっ―!」
「これは…」
驚きを露にする二人に、面を横に置いた湊が頭を下げて挨拶をする。
「お初に御目にかかります。某、真田家が長子、真田 湊と申します」
「俺は猿飛 泉」
続くように泉が名乗り、幸村が何かを言う前に信玄が口を開いた。
「この二人はお前達の血を受け継ぐ者よ」
「なんと!」
驚きに声を上げる幸村と対照的に、半歩後ろに控える佐助は疑いの眼差しを湊達に投げる。
「佐助、わしの言葉が信じられぬか」
「そうは言ってもねぇ」
「幸村は信じておるぞ」
視線の先には湊と固く握手を交わす幸村が。
「あらら、…旦那ってば」
「はぁ…」
こうなると予想していた泉は思わずため息を吐いた。
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